

ウォルマート、DX推進へ今期は1兆5000億円投資
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リテールテックプラットフォーム編集部
世界最大の小売業、ウォルマートがデジタル投資を拡大しています。コロナ禍の影響に加え、サービス充実でネット通販部門が伸びており、アマゾン・ドット・コムを追撃する構えです。
マイクロ・フィルフィルメントセンターを拡大
世界最大の米小売業であるウォルマートはデジタルトランスフォーメーション(DX)を中心に2022年1月期に約1兆5000億円を投じる計画を立てている。同社は新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにネット通販の売上高が2020年度に前の期比79%伸びており、アマゾン・ドット・コムを追撃する構えだ。
重点を置くのが物流施設「マイクロ・フルフィルメントセンター」の拡大だ。ニューハンプシャー州セイラムのスーパーセンターに導入済みで、今後2~3年のうちに100以上の店舗で稼働させる。
ロボットを駆使し、様々な集める店舗併設型の自動配送システムを設ける。ピックアップからパッキングまでに要する時間は5分。従業員が集めるより10倍の速さという。青果や精肉など生鮮品についてはスタッフが別途売り場から集め、一つにまとめる。消費者は自宅や職場でネット注文し、車で店舗の駐車場に立ち寄る。すると、スタッフがとりまとめた商品を車のトランクに入れてくれる。
さらに本社のあるアーカンソー州では、無人の自動運転トラックによる商品配達計画も進む。
TikTokを通じたライブコマースにも力
ネット通販拡大に向け、動画投稿アプリのTikTokを通じたライブコマースにも力を入れる。多数のフォロワーを持つインフルエンサーが衣料品や化粧品などの商品を紹介。視聴者は気に入った商品をアプリ上でタップするだけでその場で購入できる。視聴者はライブ配信中に自由にコメントし、友人との外出のようにコミュニケーションをしながら買い物を楽しむ。これに合わせ5月にはバーチャル試着を手掛けるイスラエルのジーキット(Zeekit)を買収した。
「米国でトップ10に入る広告プラットフォームになる」という目標も掲げる。1月には広告配信大手の米トレードデスクと提携し、自社の広告は自前の媒体で配信していく。具体的には、自社の店舗やサイトで顧客データを集めて分析し、店舗のデジタル看板などで適宜、商品やサービスの情報を表示する。

組み込み型金融で顧客サービスを充実
さらに1月にベンチャーキャピタルと共同でフィンテック企業を立ち上げると発表した。米銀行グリーン・ドットと組んで提供するデビットカードは、ウォルマートのオンラインストアや店舗での支払いで1~3%のキャッシュバックを提供。過去1年間の平均口座残高(金利付与は残高1000ドルが上限)に対して一般の銀行より高い利息を提供し、通常の2日前に給与を振り込む「給与の前借り」ともいえる機能も備えた。
小売りなどの非金融事業者が自らのサービスに金融機能を盛り込む「組み込み型金融(エンベデッドファイナンス)」が広がっている。ウォルマートは新たな収益源や顧客の詳細なデータ収集につなげ、サービス利用者は1つのアプリやサイト内で決済や融資などをワンストップで利用できる利点がある。新たな金融の形として注目され、今後のウォルマートの顧客戦略に注目が集まる。