店舗DX、カギは高齢者の攻略にあり

リテールテックプラットフォーム編集部

日本の店舗型産業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するうえで、カギとなるのがデジタル技術に習熟していない高齢者の存在です。日本は世界一の高齢化社会で、主要顧客が高齢者という企業や店は決して少なくありません。効率化一辺倒ではなく、顧客のためにもなるDXを推進する必要があります。

世界一の高齢社会・日本で求められるDX

日本の店舗型産業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するうえで、カギとなるのがデジタル技術に習熟していない高齢者の存在だ。日本は世界一の高齢社会で、主要顧客が高齢者という企業や店は決して少なくない。IT(情報技術)を駆使した無人店舗や完全キャッシュレス店は注目を集めやすい半面、使いにくいと感じる消費者もいる。効率化一辺倒でなく、顧客のためにもなるDXを推進する必要がある

電子商取引(EC)世界最大手の米アマゾン・ドット・コムが2016年、米本社内に「アマゾン・ゴー」を設置して以降、世界中の流通業が先端技術をふんだんに使った無人店舗の開発を競っている。日本でもこの数年で無人店(決済の無人化を含む)の実験が増えており、2021年に入っても、3月にコンビニエンスストア大手のファミリーマートが東京駅近くのオフィスに開いたほか、セキュリティー開発のセキュア(東京・新宿)や小学館、丸善ジュンク堂書店が共同で4月に実験店を開業。イオン傘下のダイエーが参入するとの報道もあった。

こうした店には高精細カメラとAI(人工知能)を組み合わせた映像分析、電子決済、デジタルサイネージ、最新のセキュリティシステム、ネットサービスなどが注ぎ込まれる。機械化を進め、人手不足への対応や店舗運営の効率化をめざすのが主な目的だからだ。ディスカウントストアのトライアルカンパニー(福岡市)のように、購買データを分析・活用することで販売増につなげようとする動きもあるが、現状ではまだコスト削減が主眼であることは否めない。つまり、企業側の事情によるDXの意味合いが強い。

「顧客のため」の視点不可欠

高齢者などデジタル機器の扱いに不慣れな人にとっては、こうした店舗の利用は苦しいものだ。高齢者の多い地域のスーパーなどでは、店員との触れ合いを求めて来店するという客も多い。デジタル化による省人化は立地や顧客層によってはメリットが大きくなる可能性があるが、場合によっては客離れというデメリットも生じうることには注意が必要だ。

65歳以上の割合を示す高齢化率は、日本は2020年に28.7%と主要国で最も高い。国全体としては、日本は世界で最も高齢者への配慮が必要な国だ。インターネットやデジタル機器に親しむ高齢者が増えていることは確かだが、層としては若年層に比べ新しい機器やサービスに対する習熟度が低いことも間違いない。効率化を目指すあまり高齢者がついていけないデジタル化をしてしまえば、その仕組みは若い人の多い都市部などでしか展開できなくなる。人手不足への対応が必要なのは、都市部よりも地方であるにも関わらずだ。

デジタル化を一概に否定するものではない。消費者に直接関わらない領域や、主要顧客のほとんどがデジタルに慣れた層であるなら、可能な限りDXを推進すべきだろう。しかし消費者にこれ見よがしに最新技術を見せつけても、それが顧客満足につながるとは限らない。「このDXは、顧客のためになっているか」との問いを置き去りにすれば、結局は消費者に支持されない店舗ができ上がる。

官民連携した啓発も重要

高齢者自身のデジタルリテラシーの向上も急務だ。総務省は5月、高齢者がデジタル技術に取り残されないようにする「デジタル活用支援員」の構想を明らかにした。2025年度までの5年間で、のべ1000万人の高齢者にスマートフォンやマイナンバーカードなどの活用方法を講習する。

新型コロナウイルスのワクチン接種で、多くの高齢者が予約をするのに周囲の若い人の助けを必要としたというニュースは記憶に新しい。国にとっても行政効率化の観点から高齢者のDX対応は不可欠だが、国の力をもってしても高齢者のデジタル化は容易なことではない。啓発活動は官民挙げて進めていくべきだ。

デジタル技術の革新は早く、今後も大きな変化が予想される。DXは一度すればいいものではなく、やり続けることが肝要だ。どうすれば今後も割合が高まることが予測される高齢者に、親しんでもらえるようなDXを実現できるか。この問いに向き合う姿勢が、日本社会や企業の伸びしろを決める。

リテールテックプラットフォーム編集部

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