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【オムニチャネルコンサルタントの視点】
EC化率から考える自社デジタル戦略③

逸見光次郎

これまで2回にわたって経産省発表のEC化率レポート(「令和2年度電子商取引に関する市場調査」)をオムニチャネルコンサルトの逸見氏が分析してくださいました。3回目は各分野の具体的な内容について触れていただきました。

化粧品、医薬品

平均値よりも約1ポイント低いものの、EC化率は6.00%から前年比17.79%増の6.72%となった。市場全体での2020年の1世帯あたりの年間平均支出は11万7,768円で前年比3.9%増、マスクや消毒薬などの消耗品系は増えたが、化粧品そのものの需要が伸びず苦戦した

医薬品は需要はあるが、これまでネット販売においては一般医薬品(ドラッグストアなどの店頭で販売している薬)が中心。かつ一部の要指導医薬品は販売に制限があり、ドラッグストア側も様々な届け出や、店舗同様の薬剤師の配置、出荷場所にも販売カウンターを設けるなどの手間が多く、あまり積極的ではなかった。それがコロナ禍でニーズが増え、また医療用医薬品(処方箋が必要な薬)がネット指導を介して販売が解禁となった。設備の投資などは必要だが、店舗拡大とM&A戦略が限界になりつつある業界では、デジタルシフトが進む事が想定される。

化粧品は、外出機会の減少と、百貨店などの販売チャネルにおいて時短や休店が相次ぎ、売り上げが下がった。しかし、オンラインでの肌診断やアドバイスにチャレンジするブランドが増え、ECの需要も増えて、対応を強化する企業が増えている。医薬品同様、単に商品が届けばよい訳ではなく、自分に合った情報を併せて必要とする化粧品は、スマホやアプリ、SNSを介したデジタルな接客が普及し、ECの仕組みで物を届ける連携を強化した進化があちこちで始まると考える。

生活雑貨、家具、インテリア

EC化率は23.32%から前年比22.35%増の26.03%となった。これは平均値より約18ポイントも高い。ECの内訳は7割が家事雑貨・家事用消耗品、残り3割が一般家具・インテリア・寝具類である。市場全体での20年の1世帯あたりの年間平均支出は83,196円で前年比8.2%増、消耗品のまとめ買いによる大幅な増加や、在宅ワークに備えた机・椅子の購入などが増えた要因と考えられる。

この分野においても、自宅に居ながらオンライン接客を受けて、単価の高い家具やカーテンを購入する機会は増えると考える。売場で見るのと自宅で置く場所を測りながらでは、実際のフィット感が大きく違う。またサイズや色のバリエーションもネットであれば簡単に選べる。カーテンは素材見本の郵送による色合いと材質の最終確認、家具は店頭での最終確認を必要とするケースもあるだろうが、これまでよりも満足度の高い買い物体験をデジタルと店舗を組み合わせる事で実現できるだろう。

衣類、服飾雑貨

EC化率は13.87%から前年比16.25%増の19.44%となった。平均値より約11ポイント高い。ECの内訳は半分がアウターウェア、靴・カバン・宝飾雑貨が続き、インナーウェアとなっている。市場全体での20年の1世帯あたりの年間平均支出は11万6,008円で前年比マイナス18.1%と大きく下がった。コロナ禍で店舗購入が減る一方でEC利用は大きく成長。分母となる市場が小さくなったことと相まってEC化率は大きく上昇した。

このことにより、店舗在庫を6~8シーズンの商品入れ替えで販売する売り方から、ネットでの露出や予約受付を取り入れる企業が増え、オンライン接客も増えている。特にバニッシュスタンダード社のSTAFF STARTの仕組みを取り入れる企業が増え、同社のオンラインでの販売コンテストは一般顧客の投票で行われ、100万票を超える投票があったという。海外ではアパレル専門店のZARAが店舗をEC用倉庫兼用とする変革を進めており、RFIDによるバックヤード在庫管理と併せて、積極的なデジタル化を進めながらコロナ禍でも利益を出している。こうした流れは在庫を抱えて危機感を強く持ったアパレル業界を中心に加速していくであろう。

逸見光次郎

株式会社CaTラボ 代表取締役 オムニチャネルコンサルタント

1970年生まれ。学習院大学文学部史学科卒。94年 三省堂書店入社。 神田本店、成田空港店、相模大野店、八王子店勤務。99年ソフトバンク入社。イーショッピングブックス立ち上げ(現:セブンネットショッピング)。06年 アマゾンジャパン入社。ブックス マーチャンダイザー。07年イオン入社。ネットスーパー事業立ち上げ後、デジタルビジネス事業戦略担当。11年キタムラ入社。執行役員EC事業部長、のち経営企画室オムニチャネル(人間力EC)推進担当。17年オムニチャネルコンサルタントとして独立。19年4月より現職。 現在は、オムニチャネルコンサルタント(株式会社CaTラボ)、プリズマティクス社アドバイザー、デジタルシフトウェーブスペシャリストパートナー、流通問題研究協会 特別研究員、EVOCデータ・マーケティング取締役、防音専門ピアリビング取締役、日本オムニチャネル協会理事、資さんうどん通販課長 兼務


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