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従業員の「再教育」に投資し続けられるか━
オペレーションを急変できる組織に

リテールテックプラットフォーム編集部

ウォルマートは5年でDXの目玉施策を転換
「リスキリング」は世界の潮流
「学び続ける覚悟」問われる

デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業文化の変革を迫ると言われています。それは「仕事のやり方」が変わることでもあります。そのためには人材への投資がカギを握ります。

ウォルマートは5年でDXの目玉施策を転換

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、従業員の「仕事のやり方」を大きく変える。新たなデジタルツールに習熟しなければ仕事はできず、どれほど優れた対人接客スキルをもった従業員でも、無人店舗ではそのスキルを店頭で発揮しようがない。企業がDXを推進するなら従業員の「再教育(リスキリング)」は避けて通れない。最新技術を適切に使いこなせるよう、従業員に投資を続ける覚悟が必要だ。

米ウォルマートは今年、店舗のDXで大きな方針転換をした。それまで店舗のデジタル対応の柱に据えてきた、商品受け取りの大型専用設備「ピックアップタワー」を撤去することにしたという。

ピックアップタワーは、オンラインで商品の購入手続きを済ませ、店頭で受け取る客のための設備だ。商品到着を待たなければいけないインターネット通販に比べ、客は訪店さえすれば好きなタイミングで商品を手に入れられるとあって、一定の需要があるとみられている。ウォルマートはその受け皿としてピックアップタワーの導入を2017年に始め、約1500店に導入。だが、温度管理が必要な生鮮食品に対応していなかったため使い勝手が悪く、利用者の評判はいまひとつだったようだ。

同社が店舗DXの目玉施策を5年足らずで転換することには、大きな示唆がある。1つは電子商取引(EC)とリアル店舗の融合という課題に対して、世界のトップ小売業さえも試行錯誤を続けていること。そしてもう1つは、施策が成功であれ失敗であれ、それを動かすためには現場の従業員に教育をしなければいけないということだ。

経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」の資料によると、ウォルマートは仮想現実(VR)技術を使い、災害時などの対応について現場で学べるような仕組みを導入している。ピックアップタワーの導入にあたっても、操作方法をバーチャルで学べるようにしていた。多くの従業員が流動的に働く小売りの現場でDXを実現するなら、今後も相次ぐであろう業務オペレーションの大きな変化に、従業員が早くなじめるような工夫が必要になる。

「リスキリング」は世界の潮流

これまでも、レジの入れ替えや新しい決済方法の導入などの際、企業は現場の従業員に様々な研修をしてきたはずだ。だが「レジがなくなる」「接客がオンラインになる」「物流センターがほぼ無人化される」ほどの急激な変化はそうそうない。「最新技術を使って、作業の効率性を上げよう」といった程度のデジタル対応ならまだしも、今までの仕事の仕方を見直し、デジタルに最適化するトランスフォーメーションを成し遂げるならば、それに従業員を適応させるための仕組みが欠かせない。

こうした従業員の再教育は欧米で「リスキリング」と呼ばれ、近年DXのための必要不可欠な要素として注目を浴びてきた。

米アマゾン・ドット・コムは2019年、25年までに従業員約10万人にデジタル時代に必要なスキルをリスキリングすると発表した。投資額は約800億円。実際に倉庫作業員が、ソフト開発に必要なスキルを身に付ける社内研修に参加するなどしている。

欧米諸国では日本より、人工知能(AI)などの最新技術が旧来型の仕事を奪うという懸念が広まっているとされる。こうした労働者の不安に対する配慮と、洋の東西を問わず貴重なデジタル人材を確保しようとする経営戦略の両面で、海外企業は人への投資を再加速しはじめている。2020年の世界経済フォーラム年次総会でも、リスキリングの必要性が提言され、30年までに世界で約10億人に必要なスキルを教育する仕組み作りが決まった。

「学び続ける覚悟」問われる

小売業や外食産業は、他の産業に比べた労働生産性の低さを指摘されて久しい。それには長いデフレの影響や、デジタル化による間接部門などの効率化の遅れなど様々な要因があり、原因を一概に言うことは難しい。だが多くの企業において、人事報酬制度や真に有用な研修プログラムなど人への投資が十分でなく、必要な社内改革がなおざりにされてきたことも否定できない。

再教育の対象には従業員だけでなく、経営陣も含まれる。自らエンジニアになる必要はないかもしれないが、DX推進に関する経営判断を適切にするだけのリテラシーは絶対に必要だ。ゼネラル・エレクトリック元CEOのジャック・ウェルチ氏は、自身にインターネットの知識が足りていないと気付くと、自分より年下の社員をメンターにつけ、キャッチアップするよう努めたと著書で明かしている。DXは企業経営者に、組織として「学び続ける覚悟」があるかを問うている。

参考

リテールテックプラットフォーム編集部

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