〝売らない店〟でお客の心理を把握

リテールテックプラットフォーム編集部

オンライン購入の増加により、リアル店舗の存在意義が変わりつつあります。そのような中で、一つの打開策となるのがRaaS(リテール・アズ・ア・サービス:サービスとしての小売)という考え方です。
ここでは、米国のスタートアップ企業"b8ta"の事例を元に、「体験」・「発見」によるリアル店舗における価値向上事例について説明します。

「発見と体験」がコンセプトのRaaS(サービスとしての小売)

小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を象徴する「売らない店」が注目されている。

米国のスタートアップ企業のb8ta(ベータ)。同社が手掛ける店舗が昨年、新宿マルイ1階と有楽町電気ビル1階にオープンした。直営店舗を製品の展示販売スペースとして企業に貸し出し、店内に設置したカメラやタブレット端末から来店客の行動データを収集・分析して出品企業に提供する。

ベータは2015年にサンフランシスコ近郊に1号店をオープンし、米国に加え、ドバイにも出店している。最新ガジェット(道具や装置、仕掛け)やテック・プロダクトを中心にクラウドファンディングやメーカー直販サイトなどでしか買えないようなユニークな商品を実店舗で販売している。

店舗での新たな「発見と体験」がコンセプトのRaaS(リテール・アズ・ア・サービス:サービスとしての小売)だ。

「発見と体験」に重き置く

新宿マルイ1階に出店した「ベータ・トウキョウ・新宿マルイ」は、店舗面積約122平方㍍でスタッフ数は8人(うち6人が丸井からの出向)で運営する。丸井グループはこの間、「売らない店舗」作りを志向しており、「発見と体験」に重きを置くベータとの親和性が高い。

有楽町電気ビル1階にオープンした「ベータ・トウキョウ・有楽町」は、店舗面積約256平方㍍でスタッフ数は8人ほどで運営する。オープン当初は両店合わせて約145種の商品を出品した。日本でも海外の最新ガジェットから日本の物作り技術を生かした商品、D2C(メーカー直販)ブランドのコスメやファッション、フードなど様々な商品が揃う。

日本法人のb8ta Japanには三菱地所や丸井グループ、カインズなどが出資した。今後、「EC(電子商取引)が伸びる中、リアルな店舗の価値をどのように提供するか検討している。新しい商業店舗を具体化していきたい」(関係者)という。実際、ベータは出品企業と消費者をつなげるプラットフォームとしての役割も果たしている。最低契約期間は約6カ月、出品料として月30万円前後を支払うことで店舗に出品できる。店舗運営に必要な従業員の手配、トレーニングやシフト管理、在庫管理、物流サポートなどのサービスが全て月額出品料に含まれているため、ECのみで販売しているような企業でも実店舗への出店をより手軽に実現することが可能だ。

店内の天井に設置されたカメラによって客の性別や年齢、どれくらい商品の前に止まっていたかなどを分析する。商品横に置かれた商品説明用のタブレットからの情報など全てをフィードバックしてもらえるため、出品企業はマーケティングに生かすこともできる。

リアル店舗の魅力を磨く

新型コロナウイルスの感染拡大により、リアル店舗を展開する企業は大きな打撃を受けている。ベータは消費者に対しては、「発見と体験」という価値を提供。これは近年、業態の垣根を越えた競争が激化するなか、リアル店舗に求められている価値そのもので、商業施設側にとっても魅力のある店と言える。ベータでは「今後、リアルな体験は一段と大切になっていく」と強調。手触りや香りなどリアルな体験を求める消費者と企業をつなぐ場として、リアル店舗の魅力を一段と磨いていく考えだ。

リテールテックプラットフォーム編集部

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