【アカデミック・アイ】
オムニチャネルとDXを捉える上での分析枠組み②

NEW

中見真也 准教授

前回続き、小売業におけるオムニチャネルとデジタル・トランスフォーメーション(DX)を捉える上での分析枠組みについて、神奈川大学 経営学部 国際経営学科 准教授 中見先生に解説していただきます。今回の焦点は「市場志向性」です。

市場志向性が重要になる

前回、「経営者の意識改革――両効きの経営(経済的価値と社会的価値のバランス)」について説明しました。

日本の小売業は、なぜアメリカのウォルマートのように、オムニチャネル、DX化が進まないのか。その要因について考えてみた場合、一つの要因は「経営者にある」と説明しました。しかし、経営者のオムニチャネル、DXに対する推進意識の低さだけが、阻害要因であるとは言い切れません

下記図1の中央部分である「市場志向性(データ型SCM)組織内外への浸透」のこそが、小売業のオムニチャネル、DX推進上、重要であると考えます。

市場志向性とは「お客様の小売業に対するニーズや不満、課題等を吸い上げる力」です。

図1:オムニチャネルとDXの関係性についての概念図
出典:中見真也(2020)「オムニチャネル実現のためのDXの定義、役割、重要性」,『販売革新2021年1月号 DX2021 日本小売業の現時点』,17-21頁

お客様と相互作用する場が必要

以下の図2をご覧ください。

小売業(スーパーマーケットを想定)は、店舗において、お客様と相互作用(=コミュニケーション)する場(コミュニティ)が必要となります。図2において、クッキングサポートコーナーがその相互作用の場となります。クッキングサポートコーナーで従業員とお客様とで会話し、その会話の中に「ニーズや不満、課題」などを見つけ出し、その貴重な情報(=情報の粘着性の高さ)を店舗部門(例えば生鮮部門、総菜部門など)へ情報共有します。その後、各部門のチーフから店長へと情報が報告されます。店長判断ですぐに解決できる問題は素早く、商品、サービスを通じてお客様に提案されます。

一方、店舗では判断がつきかねる場合には、店長や店舗部門チーフより本部へと情報が共有化されます。そして、本部の商品部、販売部などで問題が検討され、回答が店舗にフィードバックされ、商品、サービスを通じてお客様に提案されます。

図2 価値共創型小売企業における市場志向、および、価値共創志向概念図

スピードが顧客満足度を決める

このように「お客様からの課題やニーズの情報収集→店舗内、本部内での情報共有化→店舗従業員からお客様への提案」という一連の流れを速やかに行うことが市場志向性であり、そのスピードが速ければ速いほど、お客様の満足度は高まります。

なかでも、お客様からのニーズや課題などの貴重な情報は、「粘着度が高い情報」と言われ、従業員に付着します。この貴重な情報を従業員からいかにはがし、店舗内や本部も交え、情報共有化し、商品政策(MD)、店舗でのサービス向上に役立て、お客様に提案出来るかかが、今後の小売企業の競争力の源泉となります。

小売業がオムニチャネル、DXを推進していく上で、店舗、EC、スマホアプリなどの顧客接点を通じ、市場志向性を持つことが、いかに競争戦略上、重要かが理解いただけると思います。

参考

中見真也 准教授

神奈川大学 経営学部 国際経営学科 准教授

専門はマーケティング戦略論、流通システム論


関連記事


関連テーマ